デーモン・コア

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アイテム説明
デーモン・コアとは
デーモン・コアは、第二次世界大戦末期にアメリカの核兵器開発計画(マンハッタン計画)で製造されたプルトニウム製の球状コアである。直径は約89mm、重量は6.2kgにおよび、当初は長崎に投下されたものに次ぐ第三の核爆弾として使用される可能性があったとされている。日本が降伏したため実戦投入の機会は失われたが、その後は核分裂の実験素材として転用されるに至った。
このコアはわずかな周囲環境の変化でも核分裂反応の連鎖が進みやすい特性を抱えていた。特に1945年8月21日と1946年5月21日の二度にわたって臨界事故が発生したことが有名である。最初の事故では、ハリー・ダリアンが炭化タングステン製の中性子反射体をコアの周囲に積み重ねる実験中に手を滑らせ、コア上にブロックを落としてしまった。これによって一瞬にして臨界状態に入り、彼は大量の放射線を浴びてしまう。その後急性放射線障害が原因となり、事故から25日前後で命を落とした。第二の事故では、ルイス・スローティンが上下に分割したベリリウム製の反射体でコアを覆い、間にマイナスドライバーを挟む「危うい手法」で臨界点を探る実験を行っていたが、ドライバーを誤って滑らせたことで半球が完全に接触し、さらなる核分裂反応を招いてしまう。青い閃光とともに発生した膨大な中性子線によってスローティンは被曝し、9日後に息を引き取った。
これらの事故は極めて危険な「臨界実験」を手作業で行うという当時の状況を象徴するものであり、その後、生存者の提案をもとにリモートコントロール式の装置とテレビカメラを導入するなど、核物質の取り扱い手順が大きく改善される契機にもなったと考えられている。また実験を重ねるごとに、デーモン・コアの放射能や危険性を再評価した結果、最終的には溶かされてほかのコア製造に再利用された。
このコアが「悪魔の核(デーモン・コア)」という呼称を得たのは、人為的なミスが原因ながらも二度にわたる悲劇的な臨界事故を引き起こし、実験に参加した研究者2名の尊い命を奪ったことなどに由来する。ほんの僅かな隙間調整の誤りで一瞬にして放射線を放出する危険性を内包し、それが従来技術の脆弱性を浮き彫りにした点で歴史的にも大きな意義を持つとされている。
また核兵器として実用化されなかったものの、その希少性と数々の実験的価値、そして悲惨な事故を通じて得られた教訓から、核物理学や放射線防護の分野では非常に有名かつ象徴的な存在として語られている。コア自体は既に再利用のため溶解処理されたため現存しないとされているが、デーモン・コアに関する写真や実験記録は現在でも多くの研究者や歴史愛好家に参照され続けている。
総評
デーモン・コアは、武器として使用されなかった経緯にもかかわらず、その後の臨界事故と放射線障害による死者の存在によって「悪魔の核」と呼ばれるようになった特殊なプルトニウムコアである。核技術の黎明期における危険な実験環境を象徴する存在であり、その悲惨な事故は核物質に対する安全対策を急速に発展させる転換点になった。現代に至るまで核実験や放射線管理における重要事例として取り上げられており、核兵器開発の歴史や臨界安全の観点からも忌まわしいが貴重な遺産と言える。