オーバーロード 亡国の吸血姫

「オーバーロード 亡国の吸血姫」は、人気ダークファンタジー『オーバーロード』シリーズの外伝小説である。本編と同じく丸山くがねによる執筆で、アニメ第3期のBlu-ray全巻を購入した者のみが手に入れることができた特典小説として存在している。いわゆる“IFストーリー”の側面をもつ本作は、本編では描かれなかったキャラクターの立場や新たな設定を織り交ぜ、独自の視点からオーバーロードの世界観を深掘りしている点に特徴がある。

限定販売かつ当時の応募券制キャンペーンでしか入手できなかったことから、その希少性は極めて高いとされている。市場にもほとんど出回らず、出品されること自体が珍しく、出品された際は数十万円から数百万円といった高額でのやり取りが行われている。実際には10万円前後の比較的安価な価格帯での売買例も見られるが、それでも高級品として扱われることが多く、一部では50万円から70万円超え、なかには50万円台後半の取引や、さらには30万円前後の価格を提示するケースも確認されている。ただしあまりに高額になりすぎると転売トラブルにも発展しかねず、出品者と購入者の間で慎重な取り引きが必要とされているようだ。

この小説が特に注目される理由としては、まず“番外編”に近い形式ながら、原作者である丸山くがね本人による書き下ろしであるという点が挙げられる。本編では回収されなかったエピソードや、メインストーリーでは出番が限られていたキャラクターの立ち位置を再考させるような設定が盛り込まれており、「もしこういう展開になっていたら」というファンの想像を実際に活字化したような内容となっていると言われている。

また、2018年から2019年頃にかけて実施されたBlu-ray全巻購入特典キャンペーンにおいて、本編のディスク（全3巻）すべてに封入された応募券を集め、さらに手数料を添えて申し込みをした者だけがこの「亡国の吸血姫」を手に入れることができたという経緯がある。当時Blu-ray全巻をそろえるハードルが高かったことに加え、この外伝が一般販売される兆しもなく、電子書籍化なども一切行われていない。この厳しい入手条件こそが今の希少価値を支える大きな理由となっている。

この小説自体の内容に関しては、あらすじや詳細なストーリーが公開されないままオークションなどで取引されている場合が多く、入手した読者が感想やネタバレを共有するのを控えたい意向があるとも言われる。そもそも本作がいわば「原作者の感謝の品」として制作されたものであるため、安易な再販や電子化が実施される可能性は低く、流通数がさらに減少していく可能性も否定できない。

コレクターや熱心なファンのあいだでは入手できるかどうかが一種のステータスとなり、SNSや中古市場では話題に上るたびに高額入札が連なる光景が注目を集めている。さらに「もし亡国の吸血姫を復刻するならば絶対買うのに」という声も根強く存在するが、先述のように原作者の姿勢から再販の見込みは薄いと考えられており、ますます希少性は高まる一方である。

歴史的には2018年頃の『オーバーロードIII』Blu-ray発売時に、全巻購入キャンペーンの特典として誕生した経緯をもつ。元々『オーバーロード』は小説投稿サイト発祥というネット時代の典型的なヒット作であったが、そこから商業化され書籍化・アニメ化と展開し、本編のみならず数多のスピンオフやドラマCD、各種特典小説が制作されてきた。そのなかでも「亡国の吸血姫」のようにまとまった分量と新規の物語を含む特典は極めて稀であり、原作者自らが「感謝の気持ち」を込めて書き下ろしたことが広く知られている。

このため単なる限定商品以上の価値を持ち、コアなファンたちからは「半ば幻の一冊」と評されることもしばしばである。その希少価値を狙った転売が盛んになった結果、時には高額すぎる値段設定が物議を醸すこともあるが、実際の購入希望者は後を絶たない。一部では「高価すぎるが故に収集家の自己満足ではないか」「これを読まずしてオーバーロードを語るべからず」など、肯定・否定それぞれの意見が飛び交うほど、ファンダムの熱量を象徴する存在となっている。

現在もコレクターアイテムとして市場価値は高騰傾向にあるが、その背景には上記のような限定性や物語上の重要な要素が存在する。仮に再販や一般販売が公式に行われたとしても、その時点で「オリジナルの希少特典版」というステータスが揺らぐ可能性は低く、少数の愛好家のあいだで高値取り引きが続くと見られる。

総評

「亡国の吸血姫」は、『オーバーロード』の新たな物語を収録した極めてレアな特典小説である。通常の書店や電子書籍では流通しておらず、当時Blu-ray全巻を購入し応募したファンのみが手に入れられた希少品という背景がある。結果として市場では非常に高額で取引され、今後も再販の可能性がほぼ見込まれないため、この作品を所有すること自体がコレクターや熱心なファンには大きな意味を持つ。オークションやフリマサイトでの出品はまさに一期一会の勝負と言ってよく、価格帯が跳ね上がる現象は今後も続くだろう。「オーバーロード」を深く愛する者にとってはまさしく伝説に近い存在であり、手元にあればシリーズの世界をより深く味わえる逸品である。