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四丁目の夕日

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book > 漫画 > 山野一

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取引価格目安

2,000円

所有者

不明

アイテム説明

四丁目の夕日とは

山野一(やまのはじめ)による日本の漫画作品である。1985年から1986年にかけて漫画雑誌『ガロ』に連載され、後に単行本化された。本作は、貧困や家族の崩壊、非情な現実世界をあえて陰鬱な描写のなかで描き切る点が大きな特徴とされている。いわゆる「三丁目の夕日」とは一字違いだが、その温かな下町のイメージとは真逆の内容であり、読者の心を激しくえぐるような悲痛なエピソードが続くことで有名である。

ストーリーの概要

物語は都内随一の進学校に通う主人公・別所たけしの視点で進行する。彼は一橋大学を目指して勉学に励むごく普通の青年であったが、母親の事故を発端とした不幸の連鎖に巻き込まれ、わずかな望みすら奪われてゆく。父親の工場経営の破綻や妹・弟に降りかかる狂気じみた災難など、「ここまで不幸になれるものなのか」と言わんばかりの悲惨さが容赦なく畳みかけられるのが特徴である。ハイライトともいえる場面では、ついにたけしの精神は限界を超え、街中で無差別に人を襲撃する惨劇へと発展。結果として“加害者”の烙印を押され、長期の入院を経て人生を取り戻そうとするが、その結末も決して「救い」があるわけではないという凄まじい余韻を残す。

なぜ希少性があり、価値が高いのか

本作は刊行当初からいわゆる「鬼畜漫画」の代表格として語られ、強烈な表現ゆえに多くの読者にトラウマを残してきた一方、熱心なサブカルチャー愛好家や漫画通の間では高い評価を得ている。これは、昭和末期からバブル期にかけての、豊かさに浮かれる世間への強烈なアンチテーゼを描いた作品としての特異性が一因であると言われている。当時の『ガロ』は部数が低迷していた背景もあって市場流通が限られたことから、初版単行本は入手困難となり、特に青林堂版などは古書市場でプレミアが付くケースもある。そのため現在入手可能な文庫版や電子版は比較的手に取りやすいが、初期刊行物や未修正版を探すコレクターも存在するため、一定のレアリティがつきまとっている。

歴史的経緯・背景ストーリー

発表されたのは1985年から1986年にかけて、漫画誌『ガロ』誌上にて連載された。当時の日本はバブル景気前夜であり、人々の生活スタイルは上向きの希望を謳歌しているようにも見えた。しかし作者の山野一は、その好景気とは正反対の不条理と鬱屈した社会を丹念に描くことで、浮かれた時代への反発を表現したと言われている。低賃金労働、家族のいがみ合い、そして予想を超える暴力に繋がるまでの連鎖反応をリアルに描写することで、「下層にはもっと過酷な現実がある」という事実を突きつけたといっていい。

実際に作品中の凄惨な事件の数々は、作者自身が過去に見聞きした下町の労働事故や社会的弱者の絶望を下敷きにしている部分もあり、単なるフィクションエンターテインメントには収まらないリアリティを放っている。この読後感の悪さや胸糞の悪い表現こそが、逆説的に熱狂的ファンに支持され続ける大きな要因だと分析されている。

本作の衝撃と評価

「四丁目の夕日」は、読んだ者の多くに極めて強烈な印象を残す作品として有名である。陰鬱な画調や凄惨な展開にもかかわらず、重要な主題として「社会的弱者」や「運命の不条理」が浮かび上がるため、そのようなテーマに共鳴する読者を中心にカルト的な人気を獲得してきた。この作品がなければ80年代サブカル漫画史は語れないといわれるほど、その存在感は大きい。また、作者自身は本作の連載当時に非常に厳しい生活環境に置かれており、それを反映したかのような絶望的世界観が、さらに一部の読者を深く惹きつけていることも特徴である。

総評

「四丁目の夕日」は、読者を選ぶ強烈な作品であることは間違いない。しかし、その悲惨さや絶望の淵にこそ、当時の社会や人間の業の深さが端的に表れているといえる。読み終えた後に重苦しい気持ちとともに「生きることの理不尽さ」を考えさせられる点で、サブカルチャーの金字塔的作品として語り継がれてきたのだろう。近年は電子書籍の普及によって手に取りやすくはなったが、初版や一部の古い版はいまだに高値で取引されることもあり、独自の収集価値をも保ち続けている。もしも苛烈な内容を受け止める覚悟があるならば、本作は一読の価値があるだろう。なお、一般ルートでの購入が可能なため、Relicレベルは1となっている。