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ヒロポンの瓶

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取引価格目安

65,000円

所有者

書肆ゲンシシャほか

アイテム説明

ヒロポンの瓶とは

第二次世界大戦前後に大日本製薬(現・住友ファーマ)から販売されていた覚醒剤製剤「ヒロポン」の容器として使用されていたガラス瓶である。ヒロポンは正式には塩酸メタンフェタミンであり、疲労回復や覚醒効果を得る目的で広く市販されていた薬品である。この瓶は中身がすでに存在しない空瓶の場合がほとんどであるが、戦時から戦後にかけての薬物事情を物語る遺品として一部の収集家が注目している。

そもそもどのようなものか

ヒロポンの瓶は小型の茶色または無色透明のガラス容器で、錠剤や液体を封入するための密封機構を備えていた。戦前・戦中には工場労働者の疲労軽減用や戦時下の軍隊での使用もあったため、大量に製造された経緯がある。しかし現在では、ヒロポン自体が厳重に取り締まられる違法薬物と位置づけられているため、当時の正規品ボトルは数を減らし、希少な歴史資料として扱われている。

なぜ希少性が高いのか

戦後すぐの混乱期には薬局でも簡単に手に入れられるほど流通していたが、覚醒剤取締法の制定とともにヒロポンの製造と一般販売は中止され、所持も制限されていった。さらに戦中・戦後の物資不足でガラス瓶が他用途に再利用されたり破棄されたりしたこともあり、現存する空瓶は時間の経過とともに数を減らしている。このようにヒロポンの瓶は違法薬物関連の負の歴史を背景に、軍事史や薬史の観点でも興味を引くアンティーク品としてコレクターズアイテム化している。

歴史的背景

メタンフェタミンは元々、日本人研究者による化学合成によって欧米とは別に開発が進められ、戦中は大日本製薬の「ヒロポン」が代表製剤として認知されていた。戦局が激化するにつれて軍需工場の労働者の作業効率向上や疲労回復手段として利用されたほか、前線兵士へも支給されるケースがあったと言われている。終戦後はGHQの方針で倉庫に保管されていた在庫が一般市場に放出され、一時は誰でも買える状況になった。しかしながら依存性や幻覚症状などの副作用が社会問題化し、最終的には法律で厳しく規制されるに至った。

当時の瓶には大日本製薬のラベルが貼られているものや、「50錠入」「100錠入」の表記が残されている場合もある。オークションでは状態によって数百円から数万円、極めて保存状態が良いラベル付きの希少品は数万円以上で落札された記録もあり、最高落札額が65,000円という事例も確認されている。薬物史への関心や、戦時中の医薬品コレクターが増えたことで、市場価値が上昇傾向にある。

総評

ヒロポンの瓶は、合法薬として大量に生産され、やがては違法薬物として取締の対象となった複雑な歴史の痕跡を宿す遺品である。そのため単なる空き瓶以上のストーリー性を持ち、コレクターや研究者にとっては当時の医薬・社会状況を探る資料としても重要視されている。既に流通量が限定的であり、昭和期の薬物乱用史を象徴する品としての希少価値も高い。以上の経緯から、ヒロポンの瓶は歴史的背景と資料的価値の両面で注目されるコレクターズアイテムである。