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完全自殺マニュアル

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book > その他 > 鶴見済

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1,282円

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不特定多数

アイテム説明

『完全自殺マニュアル』は1993年に太田出版から刊行された、鶴見済による自殺にまつわる内容を扱った書籍である。様々な自殺方法を客観的かつ実践的に記述し、大きな社会的反響を呼んだことで知られている。本書は発売後、10代から20代を中心に瞬く間にミリオンセラーとなり、その売上部数は100万部を超えたとされている。

著者の鶴見済は1980年代からフリーライターとして活動しており、この作品を発表した当時、「生きづらさ」「オルタナティブな生き方・選択肢」といったテーマに強い関心を抱いていたと言われている。高度経済成長期からバブル崩壊へ変化する社会の中、定型的なレールを外れた人々への生き方の幅を提示する一方で、過激とも言える自殺手段の数々を具体的に説明していることが本書の特徴である。

内容面では、あらゆる自殺手段にまつわる下準備や手順、必要な道具やリスク、結果の確率などが列挙されている。死というタブー視されがちなテーマを、冷静かつ実例を用いて言及しているため、当時の若い読者層の心をつかんだ。一方で、それが社会に与える影響の大きさを危惧する声は少なくなかった。多くの教育現場や家庭などで「危険な本」「発禁にすべき書籍」と批判を浴び、マスメディアや政治家からの問題視も相次いだ。特に10代に与える心理的影響や模倣自殺の増加が懸念され、公共の場における取り扱いや販売規制についてもたびたび議論の俎上に上った。

また、本書が「いつでも死ねると思えば、少しは生きやすくなる」という逆説的なメッセージを含む点は、刊行当初から論争の的であった。著者自身は「自殺の推奨ではなく、生き方の選択肢の一つとして言及している」という趣旨を強調しており、社会的通念や生活圏内の人間関係から逃れにくい人々への“逃げ道”として捉えてほしいという意図を語っている。実際にこの書籍によって救われたと感じた読者も存在する半面、遺族団体や自殺防止活動を行う組織からは強い反発があった。

現在では刊行から30年ほどが経過し、社会の価値観やコミュニケーション手段が多様化する中で、本書をめぐる評価も変化しつつある。一部では「当時はタブー視された“死”を議論の場へ引き出した」として肯定的に捉える見解も出てきたが、依然として自殺を取り巻く問題や暴力的・悲惨な社会事象との関連を示唆する声も根強い。思想的・文化的な面で一時代を象徴した書籍とされる一方で、内容の危険性や読者への心理的影響がつねに問題とされ、いまだに多くの論議を呼び起こす作品である。

本書は全国的に大きな注目を浴びたことで宣伝効果も相まって流通数が増大し、「レア」であるとは言い難い。しかしその社会的インパクトやテーマの重さから、現在も絶版には至らず、書店の棚やオンラインストアでも取り扱いが続いている。本書を通じて鮮烈に示された「死を語ること」の重要性や難しさは、現代のSNS時代にも新たな解釈をもって受け継がれているといえる。

総評

『完全自殺マニュアル』は、社会に強い衝撃を与えた問題作として語り継がれている。自殺という最も重いテーマに正面から踏み込む一方で、どこか客観的・マニュアル的に割り切った書きぶりが特異な存在感を放つ。本書を批判的に読むか、あるいは“剥き出しの小さな希望”を見いだすかは読み手次第だが、20世紀末以降の日本社会の意識変容を振り返るうえで外せない歴史的資料でもある。なお、一般ルートでの入手が可能であることから、Relicとしてのレベルは1である。