赤の書(ユング)

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book > その他 > ユング
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4,950円
所有者
不明
アイテム説明
『赤の書(ユング)』は、スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングが1914年頃から記した内的体験の記録である。深層心理の世界を探究するために、自身が見た幻視や夢、象徴的なイメージを鮮明な文章と色彩豊かな挿絵によってまとめ上げた点が最大の特徴である。本書はユングにとって個人的な精神への旅の記録であると同時に、彼の理論――特に集合的無意識や元型(アーキタイプ)の着想にも大きな影響を与えた。
中世の写本を想起させる美しいカリグラフィーの装飾や鮮やかな挿絵は、単なるメモ以上の芸術的価値を帯びている。しかし刊行までには家族の意向や研究上の懸念などから長い年月がかかり、ほとんど秘蔵の書とされていた。2009年以降に各国語版が正式に出版されたことにより、ユング研究においてはもちろんのこと、美術や哲学の観点からも世界的に大きな話題を呼んだ。
本書は、ユングが自らの無意識へと深く分け入り、そこで遭遇した多層的なイメージと対話を積み重ねる過程を描写している。付属の図版版には、ユング自らが手がけた彩色豊かな挿絵が収録され、テキスト版と合わせて読むことでより深い理解が得られる。また、東洋思想や宗教、神話学の要素を取り込みながら、自身の心的世界を「神話」として再創造する様子は極めて独創的であり、後に「個性化」理論を肉付けしていく礎ともなった。
こうした歴史的背景と内的探検の壮大さゆえに《赤の書》は「神秘的な写本」と評されることも多い。現代においては、心理学や精神分析だけでなく、芸術や占星術の分野においても多角的に研究・解釈が進められている。その一方で、現行の市販版は手に取りやすい形で出版されており、少し費用はかかるが購入や図書館での閲覧が可能である。
総評
『赤の書(ユング)』は、ユングが自身の無意識の世界を探究した軌跡を示す貴重な文献である。読み進めるには難解な側面もあるが、幻想的な挿絵と深遠な象徴が満載で、歴史的・学術的・芸術的な価値を兼ね備えている。ユング派心理学の核となる概念が生み出されていく過程を体感できるため、心理学や精神世界に興味を持つ人はもちろん、芸術愛好家や神秘学に関心のある読者にとっても見逃せない一冊である。なお、現在では一般ルートでの購入が可能であるため、Relicレベルは1となっている。