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黒の三連 フランシス・ベーコン

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art > 絵画 > フランシス・ベーコン

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不明

アイテム説明

黒の三連 フランシス・ベーコン

フランシス・ベーコン(1909-1992年)が1972年から1974年頃に制作したとされる三連画(トリプティック)作品である。一般には「黒の三連(Black Triptych)」などと呼ばれ、最愛の恋人であったジョージ・ダイアーの死に深く関わる、ベーコンの人生における非常に私的なテーマが描かれていると知られている。

三連画の構成は横に3点並ぶキャンバスから成り、それぞれがジョージ・ダイアーを思わせる人物像を異なるかたちで表現している。特徴的なのは、暗い背景や激しく歪められた人体が織りなす独特な迫力であり、人生の不安や孤独、さらには死と向き合うベーコン自身の内面を強く示唆すると言われている。

ベーコンは20世紀後半のイギリスを代表する画家であり、「事実の残酷さ」を描くことを追求していた。彼が人生の中で経験した喪失感や苦悩は、この黒の三連に際立ったかたちで反映されている。ベーコン自身、恋人のダイアーが亡くなった後、大きな精神的打撃を受けたとされ、多作であったはずの画業の中でも、ダイアーを描いた数多くの三連画は特に力強く、また悲痛な美をたたえている。

本作品は「黒の三連」という名の通り、背景には暗黒を象徴する黒や深いグレーのトーンが多用され、そこに塗りこまれる激しい筆致が見る者に強烈な印象を与える。ベーコンはインスピレーションの源として、映画『戦艦ポチョムキン』の叫ぶ乳母のシーンや歯科医学の論文中の口腔写真など、生々しいイメージをしばしば引用していたが、この黒の三連でも、断片的かつ暴力的な質感の筆使いが随所にうかがえる。

制作当時、現代美術の第一人者として国際的に評価が高まり、オークション市場でもすでに高額落札が相次いでいたベーコンだが、この作品は特にベーコンの人生最晩年を彩る代表例として、非常に重要な位置づけを占める。現在は個人蔵と推察されるが、正確な所在は不明であり、公開の機会は限られている。こうした希少性と深い物語性が、美術史上の価値をさらに高めているのである。

総評

「黒の三連 フランシス・ベーコン」は、美術史においても稀に見るほどの強烈な表現力と、作家本人にとっての重要な悲哀を宿した作品である。喪失感や内面の苦悩をダイレクトに映し出すこの三連画は、ベーコン芸術の本質とも言えるエネルギーと生々しさが詰まっており、美術館だけでなくコレクターたちからも強い関心を集め続けている。