終ノ空

カテゴリ
game > 電波ゲー > 不明
Level
取引価格目安
35,000円
所有者
不特定多数
アイテム説明
概要
『終ノ空』は、1999年に美少女ゲームブランドのケロQから発売されたノベル系ADVゲームである。4人の主人公それぞれの視点で同じ事件を追う物語となっており、学園に突如として訪れる狂気を背景に、世界の終末を巡る奇妙な出来事が次々と描かれていく作品である。
当初はヴィトゲンシュタインの思想を下敷きとしたかのような印象を受けるが、実際には言語的問題よりも認識論的なテーマに重きを置き、哲学的・思索的な雰囲気を強く漂わせている。作中では主要登場人物が次々に狂気に飲み込まれる一方、「生きる意志」や「世界を認める」という姿勢などが混在し、人間存在の根底にある生死観や世界観を大胆に描き出す。
もともとケロQのデビュー作という位置づけでありながら、世界終末論や狂気・哲学を題材に盛り込んだ点が大きな話題を呼び、いわゆる「三大電波ゲーム」の一つとしてマニアに支持される存在となった。メディアミックスも行われ、小説版やOVA版がリリースされるなど、発売から年月が経った現在でも根強い人気を維持している。
本作は、2010年に同ブランドから発売された『素晴らしき日々 〜不連続存在〜』と題材や登場人物に共通点がある。しかし『素晴らしき日々』はあくまで新たな視点から組み直した作品であり、続編でもリメイクでもない。のちに企画されていた『終ノ空 remake』は一度はお蔵入りとなったが、『素晴らしき日々 〜不連続存在〜 10th Anniversary特別仕様版』にて初めて収録されている。
作中では教室や屋上など「学園」の狭い空間を舞台に、突如として始まる世界終末の兆候にそれぞれの人物が巻き込まれていく様子が描写される。心優しき主人公・水上行人、剣道部に所属する若槻琴美、内気な高島ざくろ、演説によって多くの生徒を取り込む間宮卓司など、登場人物はそれぞれ強烈な個性を持ち、物語を多角的に彩る。特に卓司の「救世主」を自称する行動や、深刻ないじめから生まれる狂信など、陰鬱なモチーフが続く点が特徴的である。
なお、本作は18禁作品として発売された経緯もあり、性的暴力や猟奇的描写など、プレイヤーを選ぶ表現がいくつか含まれている。また、発売時期が1999年夏ということもあり、同年の「ノストラダムスの大予言」と結びつけられるような世界終末論を下地にしている点も興味深い。
総評
『終ノ空』は、哲学的・思弁的要素を軸としたシナリオによって多くのプレイヤーを魅了してきた作品である。シンプルな学園ADVの体裁でありながら、日常が徐々に壊れていく恐怖や、世界の終焉をめぐる叙事詩が絡み合い、不条理かつ先の読めない展開を作り出している。すでに入手困難ではあるものの、後年の『素晴らしき日々』との比較を含め、電波ゲームや哲学を題材とする作品に興味があるならば一度触れてみる価値は高いといえる作品である。