クーロンズゲート 九龍風水傳

カテゴリ
game > 奇ゲー > 不明
Level
取引価格目安
10,000円
所有者
不特定多数
アイテム説明
1997年に初代PlayStation向けに発売されたアドベンチャーゲームである「クーロンズゲート 九龍風水傳」は、日本のゲーム史においても屈指の怪作として知られている作品である。
その舞台はまだ中国に返還される前の香港をモチーフに、陰界と呼ばれる異世界へとつながる“九龍城”が突如として出現したという設定からはじまる。プレイヤーは“超級風水師”となり、歪んだ陰の気を正すためにこの禍々しい街を探索していく。通路の奥行き感や路地裏の暗さなど、当時としては斬新なプリレンダリングCGを用いた“JPEGダンジョン”が独特の臨場感を演出したのも見どころのひとつである。
本作の特筆すべきは、その“アジアン・ゴシック”とも評される退廃的な世界観にある。狭く入り組んだ九龍城砦を思わせる路地には、中国語や英語が入り混じった看板や機械部品などが雑多に並び、どこか破滅的でありながら幻想的な美しさを感じさせる。さらに、歩き進めるごとにムービーが挿入されるシステムや、黒く湿った路地を漂うように移動する演出は、プレイヤーの感覚を揺さぶるような没入感をもたらした。怪しげな路人や“妄想”が変化した存在“妄人(ワンニン)”、さらに“鬼律(グイリー)”と呼ばれる謎の存在たちが織りなす会話やイベントは、時にユーモラスながらも一筋縄ではいかない狂気を秘めている。
ゲーム部分で注目すべきは、風水の概念をベースに組み込まれた戦闘・探索要素である。邪気を吸収し、相克する属性の邪気をぶつけて倒す仕組みは一種のじゃんけんのようでもあり、一歩間違えれば自らが邪気で蝕まれるリスクが伴う。さらに、経験値の概念がなく、ひたすら“気脈の乱れ”を正すために複雑なダンジョンを往復する必要があるため、当時としても“難解”と評価されることが多かった。それでもなお、その複雑さゆえに九龍城を歩くほどに得体の知れない場所へと迷い込んでいく感覚こそが本作の醍醐味といえる。
歴史的にはPlayStation初期の宣伝でも注目タイトルとして扱われたものの、発売延期などの影響もあり、商業的には大ヒットとはいかなかった。しかし、その圧倒的に濃厚な世界設定とサイバーパンク要素、さらに独自のキャラクターデザインや音楽によって、発売から四半世紀以上経った今もなおカルト的な人気を誇っている。
また、前日譚としてPlayStation VR専用『クーロンズゲートVR suzaku』が登場し、さらに2024年には“続編”として『クーロンズリゾーム』が分冊形式でリリースされるなど、その異世界観が完全に途絶えていないのも特色といえよう。すでにハードルの高いレアなコレクションアイテムとなっているが、その続編で紐解かれる伏線に期待しつつ、本作をより深く研究しようとする熱心なコレクターは絶えない。
総評
他には類を見ない“陰界”の香港と風水を組み合わせた奇想天外な世界観を持ち、濃密かつシュールな体験を与えてくれる作品である。アジアン・ゴシックとも称される独自のグラフィックや、先の読めないストーリー展開は、懐かしさを感じさせつつも今なお新鮮な衝撃を与える。入手難易度の高さもあいまって、コレクター魂を揺さぶる一本と言えるだろう。