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東脳

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カテゴリ

game > 奇ゲー > 不明

Level

取引価格目安

150,000円

所有者

不特定多数

アイテム説明

概要

「東脳(とうのう)」は、1994年に佐藤理によって制作・発売されたMacintosh用アドベンチャーゲームである。緑色の人間の頭部をかたどった島「東脳」を舞台に、主人公リンが失われた魂を取り戻すために異様な世界を冒険する作品と言われている。

本作は一見するとサイケデリックかつカオスなビジュアルや、東洋思想を盛り込んだ独特の世界観によって「キワモノ」と見られがちである。しかし、実際には輪廻転生をテーマにした奥深いストーリーや明確な目的が存在し、単なる雰囲気ゲーではなく完成度の高いアドベンチャーゲームとなっている。

ゲームの中では「リン」が初期の姿であり、プレイヤーはリンをはじめとする9体の姿を転生しながら「臨兵闘者皆陣列前行」の九字を集めることになる。最初に死を迎えると、顔のパーツを自由に選んで新たな生物に生まれ変わり、その生物に課せられた役目を全うすることで九字の一文字を手に入れられる。こうして死と再生を繰り返し、最終的にリンの魂を取り戻すまでが物語の骨子である。

ゲームオーバーの概念が無い点も特徴的である。生物として役目を果たす前に死んでも再挑戦できるが、役目を果たさずに死んだ場合は九字を得られず、顔のパーツ選択からやり直しになる。さらに「不死の力」を得てしまうと死そのものが不可能となり、操作不能になるため、セーブデータをロードし直すしかなくなる。

本作は当時Macintosh版として初めてリリースされ、1995年にはWindows版も発売された。英語版も存在するが、いずれのバージョンも現在は入手困難であり、国内外で非常に高額取引されやすい。製作総指揮を担った佐藤理は、その奇抜な映像センスやLSD(ゲーム)などほかの作品でも知られ、国内外の一部コレクターやゲーム研究家からも根強い関心を集めている。

この作品のレアリティを示す象徴的な要素として、ネットオークションなどでの流通数の少なさが挙げられる。小規模生産と時間経過によるディスクやパッケージの減耗、そして独特な世界観がもたらすコアファンの需要が重なり、現在ではプレミア価格となっている例が多い。中古市場では未開封の極美品などが10万円を超える例もあり、中には15万円以上の値が付くこともある。

世界観としては「五行思想」をベースにした五つのエリアが島の内部に広がっており、生命の国・ミンケン、時間の国・シチェン、欲望の国・ユイワン、夢見の国・モンチェン、そして中心の山・トンノウから構成されている。それぞれを治める王や住人たちは極めて風変わりなデザインで描かれ、プレイヤーが行う行動や転生の手順によってルートや仕掛けが解放される仕組みになっている。

登場キャラクターも、巧みに作り込まれた怪奇かつユーモラスな個性をもつ。例えば「臨」であるリンはごく普通の人間の姿だが、その後に転生する「兵」「闘」「者」「皆」「陣」「列」「前」「行」といった姿は、首や胴体が異様に長い生物や全身が楽器で構成された生物など多様である。どの姿も独自の役目と死に方を持ち、世界や住民とのやりとりを通じて最終的に死を迎えると、一文字を記された九字を得ることができる。

こうした不思議な舞台設定と輪廻転生のゲームシステムが融合し、幻想性や芸術性を際立たせている点が評価されている。背景には、日本の伝統的な思想に西洋の3DCG技術とサウンドデザインを組み合わせた美学が存在すると言われている。実際に作品中の音楽も佐藤理の手によるもので、サイケデリックで前衛的な曲調が体験の没入感を高めている。

発売から30年近くが経過した現在も、有志によるプレイ動画やファンアート、資料まとめサイトなどでその奇抜な魅力を再評価する動きが見られる。入手難易度が高いため、実機で遊ぶにはオークションやゲーム専門店で探すしか方法がないが、それでもなおコレクターが探し求める理由は、この唯一無二の世界観に深く魅了されているがゆえと言える。

総評

「東脳」は幻想的かつ奥深い世界と、輪廻をテーマにした独特のゲーム体験が融合したレアな作品である。通常のゲームシステムに囚われない自由度の高さと、美術的アプローチ、そして当時の技術を駆使したサイケな演出が詰め込まれており、まさに一度プレイすれば心に強烈な印象を残すタイトルである。近年では中古市場での価格が高騰しており、入手は非常に困難だが、ゲーム史やビジュアルアートの観点からも価値の高い魅惑の名作である。

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