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人格改造マニュアル

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book > その他 > 鶴見済

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1,320円

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不特定多数

アイテム説明

概要

『人格改造マニュアル』は1996年に太田出版から刊行された書籍である。著者は以前に『完全自殺マニュアル』などの問題作を手がけた鶴見済であり、当時から強い話題を呼んだ作品として知られている。本書は「脳をチューニングして、楽チンに生きよう」というコンセプトを掲げ、精神科医が一般に詳しく説明しない心理療法や薬物の使用法、自己暗示の手法などを交えながら、誰でも“別人”として生きることが可能であると説いている。

本書が扱う主たるテーマは「自分自身の思考や感情を大きく変容させる方法」である。具体的には、合法・違法を問わないクスリの活用や、洗脳技法、サイコセラピー、瞑想や自己催眠などが体系的に紹介されている。さらに、補章として「効果的に眠る方法」も取り上げられており、精神的な疲労や不眠の克服に向けた実践法を含んでいる点も特徴的である。これらの手段は当時の精神医療やカウンセリングの現場でも議論の的になり、従来の治療体系にとらわれずに「人格」を柔軟に変えることができるのではないかという大胆な視点を提示した。

本書が出版されたのは1990年代半ばであり、若者の自殺率や心理的な生きづらさが社会問題化しつつあった時代背景があると言われている。著者は、このような社会情勢のなかで「死を選ぶ代わりに、もっと気軽に“別人”になれる手段を探してはどうか」と提案しており、あくまで「自殺をしないための追求」という立ち位置を強調している。第一章では抗不安薬や抗うつ薬だけでなく、覚醒剤などの違法薬物まで登場し、その効果や副作用について著者なりに評価を行っている。この点は、医療の専門家から強い批判を浴びた一方で、生きづらさを抱えた読者からは「生存戦略としての新たな視点」「精神を変えるための具体的な手だて」を与えてくれる書として注目を集めた。

また、洗脳や自己暗示に関する章では、自己啓発セミナーや自己催眠の技法など、一般には「怪しい」とされがちな手段に対しても実践例を示しながら解説を試みている。そこでは、他者による洗脳よりも「自分で自分を説得する」作業にこそ大きな可能性があるとし、前向きな洗脳=セルフコントロールという形でポジティブにとらえ直している。サイコセラピーの章では認知行動療法や森田療法、果ては電気ショック療法など、従来の枠に捉われない多様なアプローチが紹介されている。本書の出版から年月が経過した今では、情報が古くなっている部分があるものの、読者の中にはこれをきっかけに専門家のもとを訪れ、自分にあった治療法を見つけた人物もいるとされている。

実際に『人格改造マニュアル』は、公認心理師や精神科医といった専門家からは大いに疑問視されてきたが、一方で「真面目な議論やサポートを受けるきっかけになった」という声もある。出版当初はショッキングな内容が注目を浴び、社会問題的な論争を引き起こしたが、著者の鶴見済自身が精神科への通院経験をもとに「追い詰められた人が生き抜くための選択肢」を検証した結果とも言われている。違法薬物の扱いなど、当然ながらリスクの高いテーマも含まれているため、読者が内容をそのまま実践に移す場合は十分な注意が必要である。

本書の物理的な構成としては、全278ページ、19cm判型で比較的読みやすいレイアウトが採用されている。終盤では“眠り”の技術についても多くのページが割かれており、睡眠によるメンタルケアが大きく取り上げられている。商業出版されて以降、多くの図書館やネットストアでも取り扱われ、中古市場においても書店やオンラインショップなどで数十円という非常に安価な値段から取引されていることがしばしば確認できる。

総評

『人格改造マニュアル』は刺激的なタイトルと内容のため、賛否両論の評価が長く付きまとってきた書籍である。合法・違法を問わない薬物の活用法や洗脳技術にスポットを当てる姿勢は当時の常識を大きく逸脱したが、逆説的に「生きづらい」という問題に一石を投じた意欲作とも言われている。読者自身がどこまでリスクを負って実行可能かは別問題ではあるが、固まった“自分”という概念を別の可能性から見直す上で、興味深い議論の出発点となることは間違いない一冊である。なお、一般ルートで入手可能である点を鑑み、Relicとしてのレベルは1になっている。