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Devotion(還願)

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カテゴリ

game > ホラー > 不明

Level

取引価格目安

1,730円

所有者

Red Candle Games

アイテム説明

概要

1980年代の台湾を舞台とした心霊ホラーゲームである。開発は台湾のインディーデベロッパー「Red Candle Games」。本作は一人称視点で進行し、脚本家の父・元女優の母・歌の才能を持つ娘が暮らしていたマンションを巡る物語が描かれている。舞台となるマンション内部は時代とともに様相を変え、同じ場所でも時間軸によって微妙に異なる風景が広がるため、プレイヤーは家族の“過去”を追体験する形で徐々に真相へと近づいていく。ストーリー面ではただのホラーにとどまらず、新興宗教や当時の台湾社会における風習・信仰が大きく影響し、家族の悲劇をより一層際立たせる構成となっている。

物語と設定

本作は1980年代の台湾映画界が転換期を迎える中、書き手として伸び悩む父と家計を支える母、そして体調の弱い娘がどう生きていたかを繊細に描写している。父は新興宗教の力にも頼ろうとするが、その結果として「娘の快癒」を願う余り、自己の判断や視野が狭まっていく過程が恐怖演出と重ね合わさり、パニック映画にはない静かで深い恐ろしさが表現されている。さらに娘がテレビのオーディション番組に出演することで得た注目も、家族の絆をむしばむ一因として機能し、家族が崩壊していくストーリーは大きな悲劇へと結実していく。

プレイヤーはマンション内を探索し、写真や日記などのアイテムを手掛かりに、目を背けたくなるような真実に辿り着く。狭い空間の中で厳粛な儀式や幻覚的な演出が重層的に展開され、登場人物たちの後悔や罪悪感が、半ば悪夢ともいえる映像表現でプレイヤーへ迫ってくる。また、1980年代当時の台湾社会における迷信や精神疾患への理解不足といった社会問題が物語の根底にあり、本作は“家”という視点を通じて、社会的・文化的背景まで含めた重厚な体験を提供する。

希少性と価値

本作は2019年の発売当初、優れた作品として世界的に注目を集めたが、習近平国家主席を揶揄するようなミームが含まれていたことから中国で大きな政治問題へ発展し、ストアプラットフォームから配信停止となった。その結果、オリジナルバージョンは入手困難となり、多くのホラーゲームファンやコレクターの間で“幻のタイトル”と呼ばれている。現在は開発元による公式オンラインストアでDRMフリー版が購入できるものの、中国市場をはじめとした大規模流通は事実上封鎖されており、大衆市場における流通は極めて限定的である。政治的な事情だけでなく、コンテンツ面でも台湾特有の風習や宗教観が色濃く描かれており、世界的なホラーゲームの中でも一段と異色の存在感を持つ。こうした背景から国内外のホラーゲーム愛好家が高く評価し、ゲーム文化上の貴重な作品としてコレクション対象にもなっている。

システムと特徴

プレイヤーは先の見えない暗いマンションをライターなどの灯りを頼りに進み、錆びついたドアや古びた廊下、封じられた神棚などを調査しながら父の記憶の断片をたどる仕組みである。ホラー演出は突発的な“ジャンプスケア”というよりは、じわじわと迫り来る精神的な恐怖が中心。過去と現在が交錯するマンションの構造変化は、いわば“もう一つの登場人物”として作品全体に重厚感を与えており、プレイヤーは時間を超越した視点で家族の苦悩を目撃することになる。台湾の伝統音楽や80年代風の番組演出、紙人形を用いた儀式など、文化的要素が随所に盛り込まれ、異国情緒と独特の怖さを同時に体験できる点も魅力の一つである。

総評

『Devotion(還願)』は、単なるホラーゲームの枠を超えて、台湾の歴史や信仰を含む複雑な社会背景を織り込みながら、一つの家族の悲痛な運命を深く抉り出す作品である。政治的な騒動や配信停止措置など多くの物議を醸し出した結果、いまでは特に特定地域においては入手自体が難しくなり、希少性も高い。それでも作品としての完成度は非常に高く、プレイ後には家族や信仰、社会のあり方について多くの余韻と考察を残すだろう。激しい恐怖表現だけでなく、現実の歴史問題や親子の葛藤が織り交ざることで、物語に強い説得力と悲哀が漂っている。ホラーゲームとしての斬新さはもちろん、社会的意義や芸術性をも兼ね備えた、極めて特異かつ貴重なタイトルと言える。ただし、現状通常ルートでの購入が可能であることからRelicとしてのレア度はかなり抑えられている。